| ストレスなどの誘引により血中のカテコールアミン1)や遊離脂肪酸2)が増加します。その結果血小板が活性化されます.活性化された血小板よりセロトニン3)が放出されます。そのための血管収縮により大脳皮質の血流低下がおこり、前兆症状が発現しますが、前兆症状を引き起こさないこともあります。
このように血流低下領域が前兆期に後頭葉で始まり、約2-3mm/分の速さで徐々に前方に拡大し、後頭葉・頭頂葉境界にまで到達します.この血流の変化を拡延性血液過少症と呼びます.頭痛発作はすでに血流低下期に始まっており、拡延性血液過少症は血管の支配領域とは無関係に起こることから、脳血管の変化でなく神経細胞の活動性変化によるものと考えられています。このような血流低下を引き起こす神経細胞の活動性変化を皮質拡延性抑制と呼んでいます。
皮質拡延性抑制が、軟膜動脈周囲の三叉神経線経や軸索4)を刺激し、カルシトニン遺伝子5)関連ペプチド、サブスタンスP6)などの血管作動性の神経ペプチドが放出されます。このために血管拡張が起こり、同時に血管透過性変化により血漿蛋白の漏出、血管周辺の肥満細胞7)が各種化学伝達物質を放出します。その結果、神経原性炎症が引き起こされます。これにより三叉神経の軸索内で順行性と逆行性の伝導が誘発されます.逆行性の伝導により、刺激を受けた部位より末梢に変化が伝わり、血管拡張や神経原性炎症はより広い範囲で誘発されます。その一方、順行性伝導により末梢よりの痛覚は、三叉神経節から脳幹内の三叉神経核を経由し、中枢にもたらされ、疼痛として知覚されます。
片頭痛発作に随伴する悪心・嘔吐などの自律神経症状は、脳幹内で三叉神経核より各種の神経核へ刺激が伝達されることにより生じます。
1) カテコールアミンとは、チロシンというタンパク質を構成するアミノ酸から誘導された物質です。多くの神経伝達物質(アドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミン)の基本骨格になっています。
2) 遊離脂肪酸とは、エネルギーとして使うために血中に溶け出した脂肪のことです。
3) セロトニン (serotonin, 5-hydroxytryptamine, 5-HT) はヒトを含む動植物が体内に一般的に持っている化学物質で神経伝達物質のひとつです。
4) 軸索とは、細胞体から延びている突起状の構造で、他の神経細胞などに情報を伝えます。
5) カルシトニン遺伝子関連ペプチドとは、中枢神経、心臓や血管など末梢の一次知覚神経の終末および遠位端に存在しているアミノ酸37個からなるペプチド(アミノ酸がつながってできた物質)です。血管拡張、心拍数減少および心筋収縮力増大を起こしたりします。
6) サブスタンスPとは、タキキニン(知覚神経C線維の末端に存在する伝達物質)の一種で痛覚の伝達物質です。三叉神経節、内頚神経節に含まれ、血管に広く存在し、硬膜の血管にも分布しています。
7) 肥満細胞の中にはヒスタミンをはじめとした各種化学伝達物質があります、アレルギー反応等で、内容物であるヒスタミンなどの物質を放出します。肥満細胞から放出されたヒスタミンやロイコトリエンC4などは気管支平滑筋収縮作用、血管透過性亢進作用、粘液分泌作用などを有し、アレルギーにおける即時型反応を引き起こします。

|